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ハンガリーの至宝 メーサーロシュ・マールタ監督特集上映決定!日本未公開5作品が2023年初夏公開&各界応援コメントも

メーサーロシュ・マールタ監督特集上映

女性監督として史上初めてベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞し、その後もカンヌ国際映画祭やシカゴ国際映画祭などで数々の賞に輝いたハンガリーの映画監督メーサーロシュ・マールタの特集上映が決定し、2023年初夏、新宿シネマカリテほかにて5作品が日本初公開される。

同時に、クリエイター支援に強みを持つ「MOTION GALLERY」でのクラウドファンディングが本日10月21日(金)より開始となり、各界からの応援コメント本国版ポスターも解禁された。

アニエス・ヴァルダやヴェラ・ヒティロヴァらと並ぶ女性作家でありながら、日本では1985年、第1回東京国際映画祭「映画祭の映画祭(世界主要映画祭受賞作)部門」で「Diary for My Children」が上映されたことを除いて、いずれも日本未公開となっているメーサーロシュ・マールタの作品。2017年より初期作品の修復が進み、2019年のベルリン国際映画祭や2021年のカンヌ国際映画祭で上映され、いま世界的にその作品の再評価が進んでいる。

そしてこの度、修復が済んだ作品の中から、1975年ベルリン国際映画祭金熊賞に輝いた『アダプション/ある母と娘の記録』をはじめとする5本が、2023年初夏新宿シネマカリテほかにて日本初公開となることが決定。女性の主体性を脅かす社会の相貌を描き続ける彼女の作品は、いまだからこそ新鮮さとともに、喫緊の視座を与えてくれそうだ。

目次

監督:メーサーロシュ・マールタについて

メーサーロシュ・マールタ監督特集上映

1931年、ハンガリーの首都ブダペシュトに生を受ける。ファシズムが台頭する戦間期、両親とともにキルギスへ逃れるも、父親はスターリンの粛清の犠牲となり、その後、母は出産で命を落とした。ソヴィエトの孤児院に引き取られ、戦後ようやくハンガリーへ帰郷する。

1968年から長編映画を撮り始める。残酷な社会のなかで日々決断を迫られる女性たちの姿を描きながら、ファシズムの凄惨な記憶や、東欧革命の前兆であるハンガリー事件の軌跡など、そのまなざしは暴力と化す社会の相貌をも見逃さない。

1975年の『アダプション/ある母と娘の記録』は、第25回ベルリン国際映画祭において女性監督としてもハンガリーの監督としても史上初となる金熊賞受賞の快挙を成し遂げた。その後もカンヌ国際映画祭をはじめ数々の国際映画祭で受賞を果たし、同時代のアニエス・ヴァルダらと並び、もっとも重要な女性作家としての地位を確立した。

最新作は2017年の「Aurora Borealis: Northern Light」。

【※クラウドファンディングについて】
モーションギャラリー
URL:https://motion-gallery.net/projects/MeszarosMarta

コメント

最高傑作の数々を世に送り出した、ハンガリーを代表する女性監督メーサーロシュ・マールタの作品が日本でも鑑賞できるようになることを歓迎します。人間ドラマとハンガリーの20世紀の歴史も描かれる作品を是非ご覧ください。
――パラノビチ・ノルバート(駐日ハンガリー国特命全権大使)

『アダプション/ある母と娘の記録』へ寄せて(※順不同/敬称略)
なんて芳醇な映画だろう。主人公の女性のさみしさと気高さ。その眼差しには生きることの哀しみも強さも、愛への羨望も諦めもすべてが詰まっている。孤独さえも人生の豊さの一部であることをメーサーロシュ・マールタ監督は教えてくれる。
――外山文治(映画監督)

社会主義体制下でも性差を超えて平等というわけではないことをメーサーロシュは堂々と描く。子供を持つことを決意したヒロインが五感を研ぎ澄まし、制度の仕組みや人間関係を見極めつつ目的に向う勇気が素晴らしい。
――田中千世子(映画評論家)

共産体制下のフェミニズムが鮮烈に描かれていることに感銘を受け、その問題意識が現在世界でも通用してしまうことに嘆き、クールなリアリズムのタッチに息を呑む。疑似母娘関係で結ばれるふたりの女性の心情を伝えるショットの積み重ねはしなやかにして優雅だ。やがて、親、パートナー、そして子を持つことへの普遍的なエモーションが張り詰める。疑いなくメーサーロシュ・マールタ監督の傑作のひとつであり、本作ほど、いま再発見されるにふさわしい作品はないだろう。
――矢田部吉彦(前東京国際映画祭ディレクター)

子供が欲しい四十代の女と、両親にネグレクトされた十代の少女。
二人の間に芽生えるものが擬似家族的なものでもなければ、単なる友情でもロマンスでもない、名付けえぬ不思議な絆であることに心惹かれました。
女性同士に芽生えた新しい関係性をドキュメントで見ているようなスリルと、生き抜いていこうとする女性たちへの眼差し。
唯一無二の作品です。
――山崎まどか(コラムニスト)

『アダプション/ある母と娘の記録』で描かれる、世代を超えた女性同士の稀有な結びつき。彼女たちの顔は向かい合うよりも、並んで同じ方を向いた瞬間に鮮烈な印象を残す。メーサーロシュ・マールタは、すでにここで男性に依拠しない女性の生き方を毅然と提示していた。
この時代にいたのは決してアニエス・ヴァルダだけではなかったと、いまこそもう一度刻み直さなければならない。
――児玉美月(映画執筆家)

特集上映作品

『ドント・クライ プリティ・ガールズ!』(1970)
原題「Szép lányok ne sírjatok」 英題「Don’t Cry, Pretty Girls!」
モノクロ/85分/2K レストア

メーサーロシュ・マールタ監督特集上映

ビート音楽のファンである不良青年たちは、うだつの上がらない日々を工場での労働に費やしている。ユリは不良青年のうちのひとりと婚約しているのだが、とあるミュージシャンと恋に落ちた。ギグを開くという彼とともに、ユリは小旅行へ出かける。しかし嫉妬深い婚約者と彼の不良仲間たちは執拗にふたりを追いかけ……。
溢れんばかりのビート・ミュージックとともに、当時の息詰まるような社会の閉塞性がたしかに刻印された、珠玉の音楽逃避行劇。

『アダプション/ある母と娘の記録』(1975)
原題「Örökbefogadás」 英題「Adoption」
モノクロ/87分/4K レストア

メーサーロシュ・マールタ監督特集上映

43歳のカタは工場勤務の未亡人。彼女は既婚の同僚と不倫関係にある。カタは子どもが欲しいのだが、愛人は一向に聞き入れない。とある日カタは、寄宿学校で生活する17歳のアンナと出会い、彼女の面倒を見ることにした。次第にふたりは奇妙な友情を育んでいく。
メーサーロシュの名を一躍世界に知らしめた記念すべき作品。家父長制すら歯牙にもかけぬ主人公たちの親密さを、決して見逃してはならない。

『ナイン・マンス』(1976)
原題「Kilenc hónap」 英題「Nine Months」
カラー/90分/4K レストア

メーサーロシュ・マールタ監督特集上映

ユリは工場勤務の傍ら、農学を学んでいる。工場の上司は彼女と恋に落ちる。ユリは彼に誠実な関係を望むいっぽう、前夫との間に子どもがいる事実を隠している。やがて彼女の秘密は明らかになるのだが、上司は子どもの存在を受け入れるだけの心の準備ができておらず……。
ドキュメンタリー作家としてキャリアをスタートさせたメーサーロシュが、作為性や修飾を極限にまで削ぎ落した「真実」の記録。

『マリとユリ』(1977)
原題「Ők ketten」 英題「The Two of Them」
カラー/92分/4K レストア

メーサーロシュ・マールタ監督特集上映

マリの夫は偏狭な男で、ユリの夫はアルコールに依存している。彼女たちはつらい夫婦生活を乗り越え、慰めを求めあう。互いの葛藤を知ったふたりは、それぞれの人生を歩むべく、ある決断をする。
結婚生活に絡めとられる二人の女性の連帯を、厳しくも誠実なまなざしで捉えた精緻な秀作。

『ふたりの女、ひとつの宿命』(1980)
原題「Örökség」 英題「The Heiresses」
カラー/109分/4K レストア

メーサーロシュ・マールタ監督特集上映

1936年、ユダヤ人のイレーンは、裕福な友人・シルビアからある相談を持ち掛けられる。シルビアは不妊に悩んでおり、イレーンに自身の夫との間で子どもをつくってほしいと言う。そうして生まれた子どもに莫大な財産の相続が約束されたのだが、彼らの関係は悪化の一途をたどる。その頃世界ではファシズムが台頭し……。
幅広い文化圏の映画監督と協業を続けるイザベル・ユペールは、その最初期の重要な出演作として本作を挙げている。この後メーサーロシュは「日記」四部作に代表される歴史映画を手掛けていくが、その契機としても見落とすことができない意欲作。


後援:駐日ハンガリー大使館/リスト・ハンガリー文化センター
配給:東映ビデオ

クラウドファンディングサイトURL:https://motion-gallery.net/projects/MeszarosMarta
公式Twitter:@MeszarosMartaJP
コピーライト:(C) National Film Institute Hungary – Film Archive

2023年初夏 新宿シネマカリテほか全国公開

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