『クレッシェンド 音楽の架け橋』ヴァイオリニスト廣津留すみれさん、紛争地でのハーバードオーケストラの経験語る

クレッシェンド 音楽の架け橋

世界各国の映画祭で上映され、4つの観客賞に輝いた映画『クレッシェンド 音楽の架け橋』(1月28日()より全国公開)のアフタートークショー付き特別試写会が実施され、ヴァイオリニストの廣津留すみれさんが登壇した。

“世界で最も解決が難しい”とされる紛争で今この時も闘うパレスチナとイスラエルから、音楽家を夢見る若者たちを集めてオーケストラが結成される──。現実にはあり得ない物語に見えるが、実在の管弦楽団へのインスパイアから生まれたという驚きの映画が完成した。

若者たちの対立と葛藤、恋と友情を彩るのは、誰もが知るクラシックの名曲の数々。和平コンサートが目前に迫った21日間の合宿で、激しく憎しみをぶつけ合う団員たち。ラストに待つ、あらゆる障害を乗り越えた“魂の演奏”とは──!若者たちを導くマエストロを演じるのは、『ありがとう、トニ・エルドマン』で絶賛されたペーター・シモニシェック

『クレッシェンド 音楽の架け橋』トークイベント付試写会

【日時】1月20日(木)20:50トーク開始~21:20トーク終了
【場所】ユーロライブ
【ゲスト】廣津留すみれさん(ヴァイオリニスト)

本作へ「多くの人に届いてほしい」とコメントを寄せてくださった廣津留さん。まず初めに映画の感想について「胸にグッと込み上げるものがありました。やはり“対話の大切さ”ということが音楽を通して表現されているなと思いました」とコメント。続けて海外の学校に通っていたご自身の体験をふまえて「本当にたくさんのバックグラウンドを持った人たちがいる中で、何も話さないと始まらない。対話をすることでお互いのことが分かり合えてくるのです。こんなに知らないことがあったんだということが増えていく、そんな様子が手に取るように伝わってくる映画でした」と絶賛した。

クレッシェンド 音楽の架け橋

大分の公立高校からハーバード大学、ジュリアード音楽院をそれぞれ首席で卒業されている廣津留さん。初めての海外でもあったハーバード大学での様子について「一旦楽器を持つと、音楽という共通言語で言葉を使わなくても通じ合えるというのが、すごく印象的で楽しかったです」と振り返る。

さらに大学在籍時には、当時在籍していた「ハーバードラドクリフオーケストラ」のツアーで、本作の舞台であるイスラエルとパレスチナを訪れたという。イスラエルでのコンサート後、パレスチナの音楽院へ現地の学生とセッションをするために向かった廣津留さんだが、そこで驚きの出来事を経験する。「イスラエルで演奏してきたあなたたちとは一緒に演奏することができませんとお断りをされてしまいました。計画になかったことで、すごく衝撃的でした」、「音楽でその問題を解決できるのではないかと希望を持っていましたが、反対に音楽は共通言語だという考えが覆されてしまった、音楽を持ってしても敵わないことがあるのだと感じました」と、映画でも描かれるイスラエルとパレスチナ問題の根深さについて語った。

クレッシェンド 音楽の架け橋

続いて話題は、本作に登場する和平オーケストラのモデルとなった実在の民族混合オーケストラを率いる、巨匠指揮者のダニエル・バレンボイムについて。「世界の和平を目指すという根本的なところがまったくブレない人。忖度がないですよね。世界平和のために間違っていると思うことに対して自分の意見を言える、それってすごい難しいことだと思います」と感心の様子。

さらに廣津留さんがこれまでに出会った、カリスマ的な指揮者や奏者は?と質問されると「世界的チェリストのヨーヨー・マさんが私のロールモデルです。ハーバードの先輩でもあるのですが、休憩時間には日本語で話しかけてくれるなど、みんなのテンションを上げてくれる人です」、「その姿を見ているので、人柄や性格が音楽作りにも出てくるんだなと思いました。ずっと憧れている存在です」とエピソードを明かし、「音楽をツールとして教育に使ったり、難民キャンプで演奏したりと、ただ音楽が楽しいから弾くということだけでなく、その先が見えている人」と語り、ゆくゆくはそういった活動もしていきたいと話した。

劇中では誰もが耳にしたことのあるような有名なクラシックの音楽が多く使われている。その曲の中で特に廣津留さんが印象的に感じたのはラヴェルの「ボレロ」だそう。「ボレロなしでこの映画は語れないですよね。みんなが同じメロディを弾くので、みんなが心を通わせないと演奏できない曲です」とし、“世界一長いクレッシェンド”と呼ばれ、本作のタイトルにも通づる象徴的な1曲についてコメントした。

音楽がパレスチナとイスラエルの対立する民族同士の架け橋となってゆく様子が描かれている本作だが、コロナ禍の今、日本に住む私たちにとってもその物語には共感することができる。最後に廣津留さんは「コロナが長引く中で、私たちは段々と自分の国のことしか考えられなくなってしまいがちです。しかし自分の周りにはいろいろなバックグラウンドの人、いろいろな民族、国籍の人がいます。相手を理解しようとする姿勢、対話をしようとする姿勢を忘れずにいきたいと思います」とコメント。廣津留さんの世界での、リアルで豊かな経験談に会場は大いに盛り上がり、トークイベントは終了した。


ストーリー
世界的に有名な指揮者のエドゥアルト・スポルクは、紛争中のパレスチナとイスラエルから若者たちを集めてオーケストラを編成し、平和を祈ってコンサートを開くというプロジェクトを引き受ける。オーディションを勝ち抜き、家族の反対や軍の検問を乗り越え、音楽家になるチャンスを掴んだ20余人の若者たち。しかし、戦車やテロの攻撃に晒され憎み合う両陣営は激しくぶつかり合ってしまう。そこでスポルクは彼らを南チロルでの21日間の合宿に連れ出す。寝食を共にし、互いの音に耳を傾け、経験を語り合い…少しずつ心の壁を溶かしていく若者たち。だがコンサートの前日、ようやく心を一つにした彼らに、想像もしなかった事件が起きる──。

作品タイトル:『クレッシェンド 音楽の架け橋』
出演:ペーター・シモニシェック(『ありがとう、トニ・エルドマン』)、ダニエル・ドンスコイ(「ザ・クラウン」「女王ヴィクトリア 愛に生きる」)、サブリナ・アマーリ
監督:ドロール・ザハヴィ
脚本:ヨハネス・ロッター、ドロール・ザハヴィ
2019年/ドイツ/英語・ドイツ語・ヘブライ語・アラビア語/112分/スコープ/カラー/5.1ch/原題:CRESCENDO #makemusicnotwar/日本語字幕:牧野琴子/字幕監修:細田和江
配給:松竹

公式サイト:movies.shochiku.co.jp/crescendo/
公式Twitter:https://twitter.com/Crescendo_movie
コピーライト:(C) CCC Filmkunst GmbH

1月28日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル池袋ほか全国公開

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