韓国映画『最後のピクニック』(9月12日公開)より、特別映像が解禁された。併せて、綾戸智恵、松本明子らからのコメントも到着した。

本作は2024年、韓国で5年ぶりに芸術・独立映画の歴代ヒット記録を更新して35万人を動員、10代から80代という全年齢層の心をつかんだヒューマンドラマ。60年ぶりに帰郷し、親友と楽しい時を過ごすウンシムの鮮やかに蘇る青春時代の思い出とともに、それぞれの波乱に満ちた人生が解き明かされていく。
解禁された特別映像は、劇中に登場する叙情あふれる詩と、イム・ヨンウンによる主題歌にフィーチャーしたもの。
本作には、60年ぶりに故郷である美しい海沿いの町・南海に帰った主人公のウンシム(ナ・ムニ)が、身を寄せるこになった親友グムスン(キム・ヨンオク)の家で、彼女が日々感じていることをカレンダーの裏側に書き出した詩に気付き、ひとつずつ読んでいく心温まるシーンがある。
この映像で朗読される「ハマナス」はその詩のひとつで、グムスンが久しく会えていない親友への想いを綴ったもの。映像では、<私の昔の友達のようにきれいなハマナス 今年も咲くんだろう>などと心に染みる言葉が、ふたりの揺るがない友情を感じられる本編シーンとともに綴られていく。

詩を朗読するのは、ふたりを演じたナ・ムニとキム・ヨンオクだ。そしてBGMとして流れるのは、韓国で絶大な人気を誇るイム・ヨンウンが本作に提供した自身の楽曲「Grain of Sand」。自らを風に舞い散る砂粒になぞらえながら大切な“あなた”への思いを優しく歌い上げていくこの曲は、グムスンが「ハマナス」で書き上げたささやかながらも豊かな人生観とマッチし、同時に本作が描くふたりの人生も思わせる、情感あふれる映像となっている。

この曲が本作のエンディングに使用されることになったのは、映画が完成間近の頃、リリースされたばかりのこの曲を聞いた制作スタッフがキム・ヨンギュン監督に推薦したことがきっかけだ。監督は、「この映画の最後を飾る曲は、慰労があり、希望も伝えてくれ、それでいて温かいといういくつもの感情を表現してくれる必要がありました。そのような曲をなかなか見つけられずにいたんですが、スタッフが「Grain of Sand」がいいのではと教えてくれたんです。実際に曲を聞いてみたら、とても素晴らしくて映画にピッタリ合う曲だと思いました」と、この曲との出会いを振り返る。
ちなみに、イム・ヨンウンは、韓国の著名な詩人ナ・テジュの詩集からインスピレーションを受けてこの曲を作り上げたことを明かしているが、グムスン役のキム・ヨンオクはナ・テジュと共同で詩集を発表したことがあり、撮影最終日にスタッフ全員にその詩集をプレゼントしたという。
また、本作に寄せられた総勢14名からのオピニオンコメントは、本作が描き出す重層的な魅力に心掴まれたことが伝わるものとなっている。主人公のウンシムとグムスンが出かける“最後のピクニック”の行方やふたりの生きざまについて、それぞれの想いも交えながら言及している。
コメント(順不同・敬称略)
ピクニックは楽しい!
この二人は今回どうだったんやろうか
親友と振り返った日々半分以上はつらかったなぁでも
この海だけは優しく迎えてくれたんだろう。
タイトルに最後のーとあるが、私にはそう思えない。
この二人も年齢を重ね本当に必要なものが何なのか見えてきて、
最期は備えるのやなく、迎え入れあえるものと思うたんとちゃうかなぁ。
どう生きるかを画面から問われたように感じた!
砂の一粒ほどの私でも頑張ろうと思わせてくれる映画やな
―綾戸智恵(ジャズシンガー)
人生最後の日に、一緒にいたい人は誰ですかー?この言葉は深く心に響きました。そういえば私の母も他界する前、女学校時代の親友の話ばかりしていました。哀しみは半分に、喜びは何倍にも大きくしてくれる“友情”。
私も瀬戸内海が見える街で生まれ育ちましたので、この映画の舞台・南海の美しい景色に、私の故郷の鮮やかな思い出が蘇りました。私も残りの人生をどう生きるか、いかに自然体で自分らしく生きられるか、考えたくなる作品でした。
―松本明子(タレント)
映画のラストの、そのあとはどうなるのか。二人は自分たちの決意を貫くのか、それとも笑って手をつないで家に帰るのか、わからない。
観た人それぞれに、ラストのあとに続く二人の姿があるのだろう。
この映画が描くのは、たんに老いの問題ではなく、生きることの本質なのだ。だから、若い世代にも自分ごととして響いたからに違いない。
―角田光代(作家)(劇場パンフレットより引用)
誰の人生にも喜びや波乱はあるけれど、共に受け入れ分かち合える存在の尊さに胸を打たれました。大切な人との時間こそ人生の宝だと教えてくれる映画でした。
―太田博久(ジャングルポケット/芸人)
思い出に距離はないのかもしれない。昨日のことのように蘇る青春は胸が締めつけられるほど鮮やかだった。だからだろうか、浮かび上がるほど現実に重くのしかかる。
それでも歩みを進める2人は美しかった。ピクニックの最後、振り向いた彼女達には何が見えていたんだろう。まだまだ捨てたもんじゃない世界であってほしい。空気を読まずに言わせてもらうが、僕は家に帰るまでがピクニックだと信じている。
―片岡信和(俳優・気象予報士)
まだまだ続くであろう人生の悩みや最期について考えさせられる作品でした。故郷での再会や、何十年経っても変わらぬ親友との友情が温かく、思い切って足を踏み出す勇気をくれる素敵な映画でした!
―おじゃす(タレント/TikTokクリエイター)
何だか心が温まったような、けど儚くて寂しいような、そんな複雑な気持ちになりました。
それと同時に私も何歳になってもこんなに素敵な親友と居れる素敵な人になりたいと思いました。
ぜひ私と同年代の皆さんにも観てもらいたい作品です!
―平井桃伽(モデル/俳優)
短期間に急速な発展を遂げた「圧縮近代」韓国の一断面を、同郷の幼馴染みで姻戚になった2人の女性の追憶と再会、悲しくもありながら、人間へのリスペクトを忘れない生き様を通して描いた。ナ・ムニ、キム・ヨンオクの2人の名優の演技に注目したい。
―木宮正史(東京大学・名誉教授/朝鮮半島地域研究)
変わりゆく時代のなかで、思い出と今をつなぐ変わることのない友情は、ついには人生をも越えて永遠へと向かう。
喜びも悲しみも、苦痛さえも美しい一篇の詩のように輝きながら。二人の大女優の演技は、老いることを知らない。
―崔盛旭(映画研究者)
かけがえのない時間を過ごした友とその記憶を手に、波乱の日々を生き抜いた二人の女性。最後に、大切なものを失わずに済んだ彼女たちは決して不幸ではない。それでも他の選択をできる社会であってほしい。
―石津文子(映画評論家)
人生の不条理さも、夢見る凡人の哀れさも、“家族の絆”の脆さも、老いと死の絶望も。この映画は現実を何一つとして隠さない。むしろより過酷な未来を首元に突きつける。だがその大荷物をそっと分かち合う彼女たちの姿に、この世界を生きていくための光を見た気がした。
―ISO(ライター)
『最後のピクニック』は、老年期の女性ふたりの友情をメインテーマとした稀有な映画だ。
生まれ変わってもまた友達になると宣言し、あなたは自分を見守ってくれる天使だと表現し、
そんなふうに衒いなく相手への想いを伝えられる彼女たちの姿が、心底愛おしい。
―児玉美月(映画批評家)
ここで語られるのは、”未来”の私たちの物語、そして”今”私たちが語らなくてはならない物語
―mikoザウルス(韓国映画沼の住人)
感情、揺さぶられまくりです。
厳しい現実、問われる尊厳。
人生も老いも、美しいことばかりじゃない。
だからこそ、ピクニックの果てに見た友情の尊さに、胸が熱くなりました。
―ゆいちむ(映画好きOL)
ストーリー
大都会・ソウルに暮らすウンシムは、60年ぶりに“宝島”と呼ばれる故郷・南海(ナメ)へと帰り、親友のグムスンの元へ身を寄せる。そこでウンシムは、かつて彼女に恋をしていたテホと再会、忘れていた記憶を一つ一つ思い出し、懐かしさに心を躍らせる。だが、ウンシムが長年この地を離れていたのには理由があった。彼女の未来を決定的に変えてしまった16歳の頃の出来事と、波乱に満ちた人生が明かされていく。そして、互いの“今の真実”を知ったウンシムとグムスンは“最後のピクニック”に出かけ、「生まれ変わってもあなたの友達になる」と誓う――。
9月12日(金) 新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー