特集:この“長回し”がスゴい!『カメラを止めるな!』など5作品放送!撮影監督・曽根剛氏の特番も ※インタビュー到着

特集:この“長回し”がスゴい!

(c)ENBUゼミナール

映画の作り手の創意工夫と遊び心が詰まった“長回しシーン”で知られる作品が「特集:この“長回し”がスゴい!」と題して、10月10日(土)10:00~ほかにてBS10 スターチャンネルで特集放送される

冒頭37分間にもおよぶ“ワンカットの長回し撮影”が映画ファンのド肝を抜いたことで記憶に新しい大ヒット作『カメラを止めるな!』など、俳優たちの演技はもちろんのこと、照明や録音、大道具・小道具に衣装やメイク、そして何よりカメラワークのすべてが見事に連携してはじめて実現可能な、あのアクロバティックでエキサイティングな映像は、いかにして設計され、撮影されたのか?『カメラを止めるな!』に加え、映画史に残る長回しシーンで有名な『黒い罠[ディレクターズ・カット版]』、めまぐるしいアクションをカメラの大移動で追う『トム・ヤム・クン!』『オールド・ボーイ(2003)』『ブギーナイツ』5作品が放送される。

さらに、本特集に合わせて、『カメラを止めるな!』の撮影監督である曽根剛さんから、各作品の長回し撮影について解説をしていただく特別番組「「カメ止め」撮影監督 曽根剛の長回し大作戦」が放送される

また、特集放送に先駆けて、10月4日(日)20:40~特別番組『「カメ止め」撮影監督 曽根剛の長回し大作戦』と『オールド・ボーイ(2003)』が先行無料放送される。

さらにこのたび、特別番組では語られなかった長回し撮影についての曽根さんのインタビューが到着したインタビューとともに本特集で再発見される長回し撮影の5者5様の“妙技”にご期待いただきたい。

 

BS10 スターチャンネル 特集:この“長回し”がスゴい!

【スターチャンネル2】10月10日(土)10:00~一挙放送
WEBサイト:https://www.star-ch.jp/news/detail.php?p=2&id=284

10:00~『トム・ヤム・クン!』(2005年)
[長回しシーン:開始後1時間2分頃~大乱闘シーン(約4分間)]

動物密輸組織に誘拐された家族同然の象を取り戻すため、単身オーストラリアに乗り込んだムエタイ青年の活躍を描く興奮のアクション。CG、ワイヤー、スタントなしの生身のアクションが話題を呼んだ『マッハ!』のプラッチャヤー・ピンゲーオ監督と主演トニー・ジャーが再びコンビを組んだ。今回も運河を舞台にしたボートチェイス、4分間長回しのワンショットアクションなど、ド迫力映像の連続に圧倒される。

(c) 2005 Sahamongkolfilm International Co., Ltd. All rights reserved.

 

12:00~『ブギーナイツ』(1997年)
[長回しシーン:冒頭約3分間/開始後1時間21分頃~約2分50秒間]

『マグノリア』のポール・トーマス・アンダーソン監督が、1970年代後半から1980年代前半のポルノ産業を舞台に、俳優や製作者たちの葛藤を描いた異色青春ドラマ。巨大なペニスを武器にポルノ俳優として一世を風靡した実在の人物をモデルに、時代を駆抜けてゆく青年をマーク・ウォルバーグが演じる。ジュリアン・ムーアをはじめとする演技派女優がポルノ女優を演じ、人間の享楽と悲哀を表現してみせる。

(c) New Line Productions, Inc.

 

14:45~『黒い罠[ディレクターズ・カット版]』(1958年)
[長回しシーン:冒頭約3分20秒間]

奇才オーソン・ウェルズが監督し、革新的な撮影技法等が評価され、現在ではフィルム・ノワールの名作となった作品。冒頭、爆弾の仕込まれた車をカメラが追う長回し場面における異様な緊迫感は秀逸。腹に詰め物をして入念なメイクを施したオーソン・ウェルズ演じる悪徳刑事の存在感は、主人公演じるチャールトン・ヘストン以上に圧倒的。白黒映像と不穏な音楽も相まって、極上の世界観を醸し出している。

(c) 1958 Universal City Studios, Inc. Copyright Renewed. All Rights Reserved.

 

17:00~『カメラを止めるな!』(2017年)
[長回しシーン:冒頭37分間]

低予算映画のクルーがゾンビに襲われる姿を37分のワンカット映像で描き、鑑賞後に最初から見返したくなるような練りに練られた構成によって観客を虜にした異色のホラーコメディ。口コミで火が付き、東京2館での上映から全国公開に拡大されロングランヒットを記録。海外の映画祭でも話題を集めて数々の賞を受賞した。本作で劇場長編デビューを飾った上田慎一郎監督とともに、撮影時はほぼ無名だった出演者たちも一躍人気者に。

特集:この“長回し”がスゴい!

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18:45~『オールド・ボーイ』(2003年)
[長回しシーン:開始後43分頃~格闘シーン 約2分40秒間]

『JSA』『スノーピアサー』のパク・チャヌク監督が、土屋ガロン(作)と嶺岸信明(画)による同名漫画を映画化。カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞し、スパイク・リー監督によってハリウッドリメイクもされた衝撃のサスペンス。理由不明のまま15年もの間監禁された男の復讐のドラマが、壮絶なバイオレンスにユーモアを織り交ぜて描かれる。『シュリ』のチェ・ミンシクが、監禁された男の執念と絶望を体現。その鬼気迫る演技は必見!

(c)2003 SHOW EAST

 

先行無料放送
【BS10 スターチャンネル1】10月4日(日)
20:40~特別番組『「カメ止め」撮影監督・曽根剛の長回し大作戦』
21:00~『オールド・ボーイ(2003)』

 

特別番組『「カメ止め」撮影監督・曽根剛の長回し大作戦』

先行無料放送
【BS10 スターチャンネル1】10月4日(日)20:40~
【スターチャンネル2】10月10日(土)9:45~

大ヒット作『カメラを止めるな!』で撮影監督を務めた曽根剛さんが、同作の長回し撮影の裏側を語るほか、「特集:この“長回し”がスゴい!」で放送する『オールド・ボーイ(2003)』、『トム・ヤム・クン!』、『ブギーナイツ』、『黒い罠[ディレクターズ・カット版]』の長回しシーンについて、その魅力や撮影手法などを独自の視点で分析する。そして、番組の最後には何かが起こる…?

 

撮影監督 曽根剛さんインタビュー

映画の撮影について、まず基本的には演者にカメラの存在を意識させないことが大切だと思うんです。でも“長回し”はとても難しい撮影方法で、演者が沢山居ればいるほど、演出の仕掛けが有ればあるほど、カットを切れないので失敗したらまた最初から撮らないといけないので、よりカメラの存在を意識させてしまうかもしれません。ただ、作り手としてそれを完成させた達成感はとても大きいです。

長回しを撮る時はとにかく段取りが大切です。リハーサルを繰り返し行わなければいけません。長回しの間に危険なシーンが有ればあるほど、タイミングを全て合わせなければいけないし、準備の手間が非常にかかります。また映画は時間も予算も限られているから、リスクは高いです。

でも、観客にとっては、リアルタイムに劇中の出来事を追体験できるところが魅力だと思います。例えば『ウトヤ島、7月22日』という映画は、ウトヤ島での無差別銃乱射事件を実際に事件が起きた72分間で描き、1カットで映像化しています。カメラはずっと1カットで逃げたり伏せたりして実際にその体験をしているような、登場人物たちと一緒に逃げているような錯覚を覚えました。長ければ長いほど強い没入感が得られる効果があります。またカメラを観客に意識させることでどうやって制作しているのか?という作り手の視点を与えることが出来ると思います。

◆『カメラを止めるな!』について
1カット長回しで番組を作る人たちの物語ですが、実際にその番組制作の過程を1カットで撮る必要は無かったんです。ただ、劇中の登場人物が1カットで撮るために奮闘しているのに、それを作っている側の自分たちが頑張らなくていいのか?という監督の上田慎一郎さんの思いが強かったんだ思います。

一番難しかったところは、かまれた人間が2分くらいでゾンビにならなければならなかった場面です。冒頭がすべて1カットだと知ったのは台本を読んだ時で、どんどんゾンビになっていく登場人物たちをどうやって1カットで撮るのか?と思っていましたが、メイクさんから「これならいけるかも」という言葉が出てようやく出来るかもという気持ちになったことを覚えています。その方法は、段階的にゾンビとして見せていく方法です。まず、人間として映っている役者さんが画面から居なくなります。そのあと2分後に登場するときは、まずしっかりとした特殊メイクをせず、片腕だけ血をつけた状態で登場させます。また画面から居なくなった間に、しっかりとした特殊メイクを施して完全なゾンビになるという、“段階”を上手く活用して撮影しました。通常だとゾンビのメイクを施す時は30分から1時間くらいはかかりますから。監督からは、より“チープ”なゾンビにして欲しいという依頼があった部分もありますが、それでも普通は30分くらいはかかります。画面に映る部分だけでもとにかく早くメイクをすることを心掛けたことが成功のきっかけになっていると思います。

撮影時の難しさは、屋内と屋外を1カットで撮影する時の光量の調整です。室内を撮っているときに外を撮ると真っ白になったり、逆に外から室内に入ると真っ黒になってしまいます。そこを1カットで撮っていかないといけない。そのためビデオカメラの機能を応用し、移動の時にオート機能にして自動的に調整できるようにして、その後すぐにマニュアル機能に戻す作業を行いました。また、カメラのレンズの前に明るさを調整するフィルターをつけてそれでコントロールしたりしましたね。

あと“長回し”シーンについては計4回通して撮影して、ちょうど3回目の時ようやく最後まで辿りつけてOKが出たんですが、途中でカメラマンが転ぶシーンでカメラが止まっているというハプニングに遭いました。ただそのハプニングがあったおかげで、4回目のテイクでカメラレンズに血しぶきが付くという臨場感のある画が最後の最後で撮影出来たんです。その画が撮れたときは本当に興奮しましたし、最後のテイクになるこの4回目が一番いいものだったと思います。その後撮影しながらいつレンズを拭くか、その回数も悩みましたね。あの時本当にカメラが止まって良かったです(笑)。

制作側として“長回し”をすることの魅力として、それに立ち向かう挑戦やそれを乗り越えた達成感はあります。本作で“長回し”撮影をした理由は、ゾンビ映画が最も“長回し”に向かないジャンルだからだと思います。撮影時にもし失敗した場合、メイクや血だらけの現場から復旧するのに時間がかかるんです。その緊張感や難しさに挑戦している登場人物たちの姿がちゃんと伝わる構造になっているところが本作の魅力なんだと思います。

◆『オールド・ボーイ(2003)』について
この映画で使われている“長回し”は、復讐を遂げる過程でとある組織に対峙して1対複数で闘う場面で使われています。制作側からみてシンプルなシーンなのであまり難しくないと思いますが、狭い廊下の中で全員の全身を映して撮影をしていますので、廊下の壁を失くしてゲームのような横スクロール画面のように格闘をします。その構図がとても斬新で、印象に残っていますね。スパイク・リー監督の本作のハリウッドリメイク版でも同じようなシーンがあるんですが、立体的な動き方をしていて、韓国版みたいな斬新さがなかったです。もともと作品が日本の漫画が原作なので、ゲーム的な構図が活かされているのかもしれません。トンカチを使って闘う主人公の役者さんの技術が大変だったと思いますね。
過去の自分を巡っていく回想シーンもとても斬新で、過去の自分と現在の自分を同じ画面で見せて、過去の回想から現在に戻っていくところも1カットで見せていて、凄いと思いました。

◆『トム・ヤム・クン!』について
建物の中を立体的に見せながらの“長回し”をしていて、上の階から下の階へ移る中で、何十人を相手に主人公を演じるトニー・ジャーがアクションを見せるんですが、全員のタイミングを合わせないと出来ないシーンだと思いますので、この“長回し”は本当に凄いと思いましたし、一体どうやって撮っているのか?と興味深かったです。カメラが先に回ってアクションを見せたり、インパクトはかなりありますね。全員の段取りを決めたり、壁や物が壊すタイミングとか、どこまで決めているのか、より難しい撮影ですよね。
アクションシーンを“長回し”をすることで、目の前であのトニー・ジャーのアクションを体験できる効果を生んでいると思います。

◆『黒い罠[ディレクターズ・カット版]』について
冒頭の国境沿いのシーンでアメリカからメキシコへ国境をまたいで1カットで撮影しています。『トム・ヤム・クン!』と違って本作の“長回し”は客観的な視点で活用させていますね。仕掛けられた爆弾をずっと追うことで、観客にある緊張感を不える効果を狙っていると思います。カットを割るとその緊張感が途絶えてしまうので、“長回し”によって爆弾が爆発するまでの緊張感を持続させていますね。
多分当時はカメラを肩に乗せて撮影するという概念が無かったと思いますので、移動車にカメラを乗せて撮影し、そのままクレーンに乗って撮影、下りた先でも移動車に乗せて、といった方法なんだと思いますので、当時としてはかなり画期的な撮影方法だったのではないでしょうか。今はステディカムカメラがあるので装備はさほどかかりませんが、当時は本当に難しかったはずです。

◆『ブギーナイツ』について
男が妻の浮気現場を目撃してしまうんですが、その後のシーンからずっと“長回し”をしています。そして男は妻を殺してしまい、最後に自殺を図るまでもずっと“長回し”をしています。それによって登場人物の気持ちに寄り添う効果がとてもよく表れていると思います。本作はオープニングもエンディングも“長回し”をしていて、始めは登場人物の紹介としてワンカットで見せて、最後にその登場人物たちがどうなったのか同じワンカットで見せる対比的な手法を取っていて、素晴らしかったですね。
『黒い罠』もそうですが、オープニングでいかに映画に引き込めるか、という点で“長回し”を使うことが多いと思います。作り手は始めのカットを如何に見せるかを考えるからです。

コロナウィルスの影響で、撮影時間の制限を設ける制作会社もありました。6月、7月は常に換気やフェイスガードをして撮影をしたり、主に環境が大きく変化したと思います。あとロケ撮影がやり辛くなっていて、東京から離れて撮影することが困難な状況です。海外渡航が出来ないので、アメリカに見えるような場所を国内で探したり(笑)。予算の少ない作品は、なるべく協力という形でお願いすることが多いですが、気軽にできなくなっていますね。またロケをすると背景の人物が全員マスクをしているので、時代設定が難しくなりました。そういった制限が加速する中、短い尺のコンテンツがどんどん増えるかもしれませんが、今回特集放送する映画はカットの効果を改めて考えることが出来る貴重な作品群だと思いますので、ぜひお楽しみください。

 


【BS10 スターチャンネル】
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