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『シスター 夏のわかれ道』イン・ルオシン監督インタビュー&メッセージ映像解禁「残酷なこの世界で愛を持ち続けて欲しい」

シスター 夏のわかれ道

中国全土を巻き込む社会現象となった映画『シスター 夏のわかれ道』(本日11月25日(金)より公開中)のメガホンを取った、36歳の新鋭監督イン・ルオシンのインタビュー&メッセージ映像が解禁された。

看護師として働くアン・ランは、医者になるために北京の大学院進学を目指していた。ある日、疎遠だった両親を交通事故で失い、見知らぬ6歳の弟・ズーハンが突然現れる―。養子先が見つかるまで仕方なく面倒を見始めるが、次第に弟を思いやる気持ちが芽生え、彼女の固い決意が揺らぎ始めていく…。自分の人生か、姉として生きるか。迷いながらも踏み出した、未来への一歩とは―。

中国安徽省出身、1986年生まれの若干36歳のイン・ルオシン監督は、中央戯劇学院演劇文学演出科を卒業し、「イェルマ」「真夏の夜の夢」など多くの演劇や、映画の脚本を担当してきた。2020年に『再見、少年』で長編映画デビューし、本作が監督2作目となる。

今回インタビューとあわせて解禁された映像では、日本で公開する喜びと、この映画で感じて欲しい希望の思いを語っている。

※本記事には物語のネタバレに触れる箇所があります。未鑑賞の方は十分にご注意ください。

目次

イン・ルオシン監督 インタビュー

―この物語を撮ろうと思ったきっかけ
脚本にこんな描写がありました。弟が姉の部屋の窓に向かって外から石ころを投げ、生かじりの知識でイタズラっぽく大声で曹植の「七歩詩」を暗唱するのです。“豆の茎で豆を煮る。豆は釜の中で泣く。豆も豆殻も根は同じ。どうしていじめるの?”その光景は瞬時に私の脳裏に広がりました。暗闇の中、窓の外では星がきらめき、2人の瞳は見つめ合い互いの心の中を探りあっている。短い時間で2人の間に無数の複雑な感情が湧き上がる。姉も弟も、心の中で密かに問いかけている。“あなたの存在は、自分にとって何を意味するのだろう?”と。このシーンが撮影を決意した決め手です。

―チャン・ツィフォンとダレン・キムのキャスティング経緯について
ツィフォンとは前作『再見、少年』で一緒に仕事をしたのですが、彼女の強靱さ、感覚の鋭さ、動揺しない所が、アン・ランの不屈の闘志を持ったタフなキャラクターと非常にマッチしていたのです。唯一の懸念は、彼女の年齢が、役柄より5歳以上も若いという点でした。しかしツィフォンと絶えず脚本や役柄についてディスカッションを重ね、徐々にアン・ランに入り込んでいた姿をみて、彼女がこの役を演じきれると確信をしました。キムはオーディション動画を見た時、母親の指示に従いながらしぶしぶ演技している感じでした。しかし、その目はとても澄んでいて、つたない動作の中にみせる自然な姿が、とても印象的でした。面接で彼にゲームの中で演技の練習をさせてみると、非常にリラックスして、反応も素早く、高い集中力を見せました。すべてが素晴らしかったので、大勢の中から最終的に弟役に選びました。彼は撮影時4歳半で、役柄より幼かったのですが、見事に演じ切りました。


―この映画をつくる上で参考にした作品
参考としたのは、エドワード・ヤン監督の『ヤンヤン 夏の想い出』、是枝裕和監督の『奇跡』、『海よりもまだ深く』です。何回も見返しました。

―中国の公開時、SNSで議論となった当時の反響
観客からは、とても感動した、姉弟の関係、叔母と叔父のキャラクターについて議論が起こったり、姉弟の運命はどうなるのだろうか、といった多くの反響がありました。また自分の人生を歩もうとするアン・ランの気持ちを、身近に受け取った女性もいました。いろんな議論が起こり、それを感じて嬉しく思いました。

―観客に伝えたいメッセージ
本作は、劇中の人物にとって100日あまりの出来事です。私は最終的にオープン・エンディングを選びました。この結末で私が伝えたかったことは、家族によって心を傷だらけにされ、すでに“家を出る”決断をした女の子の固く閉ざされた心の扉が、歳の離れた弟との新たな姉弟関係によって、わずかに開いたとしたら、彼女はどんな選択をするのだろうか?最終的な選択は、弟の手を取り、ひとまずその場から逃げ出すことでした。この先の暮らしがどうなるか、私はクリエイターとして、彼女に絶対的な結末を与えることはできません。アン・ ランに、そして観客に伝えたかったことは、世代間の隔たりに痛みは付き物であるということ。そして、我々は永遠に対立しながら、その複雑で親密な関係の中にいるということです。共に生き、折り合う点を探すのか、あるいは消極的になるのか、または反抗して決裂するのか?アン・ランは羽がたくことができる以上、羽ばたいてほしいと願うと同時に、この残酷で変化の多い世界でも愛を持ち続けて欲しいと願っています。


日本の試写会で共感度93%の高評価を叩き出し、「爆発的大ヒットは納得の良作」「最後までこの姉弟は観客の心を鷲掴みにする」と日本でも熱狂的な感想が続出している本作。監督がラストに込めた思いを、ぜひスクリーンで確かめてみては。

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