山下敦弘監督&呉美保監督が語る映画作りの原点と情熱 『ヌーヴェルヴァーグ』一般試写会レポート

リチャード・リンクレイター監督の最新作『ヌーヴェルヴァーグ』の一般試写会が行われ、監督の山下敦弘と呉美保が登壇した。

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『スクール・オブ・ロック』、『6歳のボクが、大人になるまで。』、『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』から続く『ビフォア』シリーズで知られるリンクレイター。本作は1959年、ジャン=リュック・ゴダールと彼の長編デビュー作にして、ヌーヴェルヴァーグ=“新しい波”と呼ばれる当時の革新的な映画運動の記念碑的作品となった『勝手にしやがれ』の製作過程を、仏映画界を代表する映画作家たちとの活気ある交流とともに描いた物語。

試写会上映後には、「脚本なし、リハなし、即興演出、ゲリラ撮影」で制作された『勝手にしやがれ』にちなみ、一般の観客と映画を一緒に観たゲストが、そのまま登壇する「ぶっつけ本番トークショー」を開催。ゲストの山下監督と呉監督は同時期に大阪芸術大学で学び、映画監督を志した戦友とも言える同級生。本作を初めて観た二人が興奮冷めやらぬ様子で客席より登壇した。

山下監督は冒頭、「僕、ゴダールをほとんど観たことがなくて、なぜここに呼ばれているのかと思いました」と笑わせつつ、「でも、『勝手にしやがれ』を観たくなりました」とコメント。一方、呉監督は「めちゃくちゃ面白かったです」と興奮気味に語り、「白黒で撮られているのは、当時の服など色が分からなかったからかな、と想像しながら観ていました」と、本作の映像表現にも惹き込まれた様子を見せた。

リンクレイター監督の作品に親しんできたという呉監督は、「リンクレイター監督の“掘り下げ力”がすごく好き。毎回、興味の対象が違うのに、それがちゃんとエンターテインメントになっていて、独りよがりじゃない」と信頼を寄せる。山下監督も、「ヌーヴェルヴァーグ関連の作品をあまり観ていなくても、すごく楽しめた」と語り、「この映画を観ると『勝手にしやがれ』を観たくなるし、それを観るとまた本作に戻ってきたくなる。不思議な作りになっている」と、本作が映画史への入口にもなり得る魅力を指摘した。

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劇中で描かれるゴダールの即興的な撮影スタイルについて、山下監督は自身の『リンダ リンダ リンダ』撮影初日を回想。「35ミリでの商業デビューのような作品で、気合いも入っていたんですけど、初日はペ・ドゥナさんがグラウンドを歩くだけのシーンで、1発OKにしちゃって。3時か4時ぐらいには終わっちゃった」と振り返り、「スタッフは不安だったと思うけど、僕としてはそれしか撮りようがなかったし、僕もこれでよかったのか?と不安だった」と当時の心境を明かした。

呉監督は、本作に描かれるゴダールの現場について「20日間しかない中で、台本があるんだかないんだかという状態で、どんどん日数が消化されていく。どんな精神なんだろうと思った」と驚きを語る。一方で、「みんな文句は言うけど、たぶんゴダールに魅了されている。ユーモアと才能があったから、ついていけたんじゃないか」とも分析した。

若きゴダールの“あり得なさ”について、山下監督は「28歳ぐらいで長編デビューして、あの態度は普通はありえない」と笑いながらも、「批評家としての評価があったからこそ、あそこまで振り切れたのかもしれない」と語った。さらに、台本を渡さず、その場でセリフを伝えるような演出については「若い頃に憧れた作り方。台本がないとか、その日に渡すとか、贅沢ですよね。でも、度胸と自信がないとできない」と語った。

呉監督は、自身も子どもの演出では声は後からつけることを前提として、その場で声がけしながら導くことがあるとしながら、「これを観て、大人の俳優さんにもこうやってみたいと思いました」と刺激を受けた様子。「映画制作はこういうものだ、というものがだんだん凝り固まっていくけれど、それをぶち壊す作品でもある」と、本作の自由さに強く反応した。

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また、二人は“映画を作り始めた頃”の感覚にも話を広げた。山下監督は「最初に映画を作り出した頃って、映画にものすごく憧れて作る。まだ作ったことがないから、映画って魔法がかかっているような、特別なものに感じる」と語り、「でも作っていくと、どんどん現実的なものになる。準備、セリフ、カメラ割り、全部が人間が作っていると知っていく。若い頃にあった“奇跡を起こそう”という感覚が薄れていく」と率直に吐露。そのうえで、「その時にしか作れない何かがある」と、本作が呼び覚ます原初的な映画への憧れを語った。

呉監督も「この瞬間には戻れないんだな、というノスタルジーな気分になった」と話し、「アート映画は正解がわからない。セリフひとつとっても、観客が好きかどうかに委ねる部分が大きい。そこに向こう見ずに突っ込んでいく感覚は、自分にもまだあるかもしれない」と、自身の創作にも通じる感覚を見出していた。

本作で描かれる少人数の映画作りについて、呉監督は「声が届くから楽しい」と語り、山下監督も「機動力がある。少人数のスタッフの方がやりやすい」と共感。「人数が多いと、しがらみやプレッシャーも増える。リンクレイター監督も、『勝手にしやがれ』ができた空気感や自由さに、共感と憧れがあったんだろう」と推察した。

さらに山下監督は、ゴダールやヌーヴェルヴァーグの存在について「映画を壊してくれた余波を、自分たちもどこかでもらっているのかもしれない」と語る。大阪芸大時代の先輩たちの極端な映画作りにも触れ、「そういう映画があるということの中に、自分たちの映画の可能性もあったのかもしれない」と、自身の原点にも重ねた。

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最後に呉監督は、「若い人が、目の前の面白いものだけに目を向けて突っ走る感じが、この映画の良さ」と本作を表現。「映画好きだけでなく、若い人たちがこの映画に触れて、時代の流れや映画史を掘り下げるきっかけになれば」と期待を寄せた。映画を愛し、映画に憧れ、映画を作り続けてきた二人だからこそ語ることのできる、映画づくりの原点と創作への情熱が詰まったトークイベントとなった。

『ヌーヴェルヴァーグ』は7月10日公開。

『ヌーヴェルヴァーグ』
出演:ギヨーム・マルベック、ゾーイ・ドゥイッチ、オーブリー・デュラン
監督:リチャード・リンクレイター
プロデューサー:ミシェル&ローラン・ペタン
脚本:ホリー・ジェント&ヴィンス・パルモ
協賛:Chanel
2025/フランス/106分/仏語・英語/5.1ch/1:1.37/モノクロ/原題:Nouvelle Vague/日本語字幕:井村千瑞
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
配給:AMGエンタテインメント
(C) 2025 ARP – Detour Development LLC
https://nouvellevague-movie.com/

7月10日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー

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