【タキ】:もろもろ作業の合間、ちょっと手(と頭)を休めに、ぷらっと畑に出ます。
気温の上昇とともに芽吹き始めた野菜たち。その成長ぶりに一喜一憂、春の恵み(収穫)を夢想し、気づけばなんだかニヤけているタキ。花の香りや土の感触、水路の水音には、どこか人を無防備にさせる「原始のちから」があるようです。
水ぬるむ陽射しは、同時に「雑草」にも活力を与えます。どの発芽より早く、広く、力強く勢力を拡大し始める雑草たち。にわかに緑騒がしくなる畝(うね)。やっと芽が出たー!と思ったら……雑草 気づいた瞬間草むしりの始まりです。
むしりっ むしりっ むしりっ む…ぶちっ(←根が切れた) ……むしりっ むしりっ
無我。無心。雑草抜きの作業は、煮詰まった頭をカラッポにしてくれる極上の気分転換。一心不乱にむしり続けます。時に勢い余って本命の苗を引っこ抜き悲鳴を上げるタキ。
土が酸性だろうがアルカリだろうが踏まれようが切れようが獣が掘ろうが鳥がついばもうが雪に埋もれようが病気が虫が除草剤がetc、生え育つ野草。
土づくりや温度、虫、病気、受粉の管理までされて、人が欲しがる見た目の美しさと(過度の)実りを強要される現代の青果。
人の意を介さない野生に於いては、はたしてどちらが「雑」草とされるのか。
……などと哲学?めいた想いが浮かんでは消え、気づけばあっという間に2時間くらい経ってたり
空き家の間荒れ放題だった畑を、本の知識のみで「雑草の根を取らねば!」と躍起に耕していたタキに向けご近所さん。
「そんなもん土かぶせて埋めちゃえばええんじゃ。どうせすぐ生えてくるわ」
……はい、おっしゃる通りでした。家庭菜園のわずかなスペースですら野草を追い散らすことなど不可能デス。
本当の圧倒的な(生命)力の前では「人のちから」など及ぶべくもないことを身をもって知る草むしりの午後。春はもうすぐそこです。