庶民にもなんとか手の届きそうな価格帯のビデオデッキが店頭に並び、でもビデオテープがまだ1本二千円もしていた、そんな頃。日曜日の朝、クラシック曲を紹介する「音楽の泉」というラジオ番組がありました。
土曜の深い時間、「夜のスクリーンミュージック」をエアチェックし、その流れで布団の中で深夜放送を聞きながら夜更かし。朝、眠い目をこすりながら階段を降りると、そこに流れている「音楽の泉」のオープニング(エンディング)曲、「シューベルト 楽興の時 第3番」。
(タキのおさがりの)ラジカセで、かの番組を録音しながら、縁側で庭を眺めている父。
「おはよう」
「おはよう」
以下双方無言。テレビのコマーシャルやショッピングセンターで耳にしたようなクラシック曲だけが風に乗って流れていきます。
洋楽や洋画サントラ(に興味を持つ自分)がカッコイイと思って(思い込もうとして?)いた厨二病タキ。こんなののどこがいいんだろう?などと不思議がりながら、黙って一緒にぼーっと庭を眺める、そんな日曜の朝。
この春から、社会に出て初めて「毎週日曜日が固定で休み」という業務に就いたタキ。日曜の朝、畑で雑草を抜くその腰に下げたスマホで流す作業用BGMは……クラシック曲でした。
当時の父の歳に近付いて、父が何を思っていた……のかは正直分かりませんが(苦笑)、何を背負っていたのか、支えていたのか、何となく想像できる……所詮想像の域を出ませんが……近いであろう気持ちを抱けるような気がして。
「シューベルト 楽興の時 第3番」を聞きながら、心の中で父に語りかける。謝りたいこともたくさんあるけれど、謝罪を求めてなどいないことも分かっているので、ただ一言。
「いろいろあるけど幸せだよ」
瞼の父は「知ってるよ」とでも言いたげに、少し口の端を上げ、でもやっぱり無言で。
自分に酔ってるねぇ、などと自嘲しつつ草むしりを続ける、そんな日曜の朝。テレビのコマーシャルやショッピングセンターで耳にしたような……今は素直に好きなクラシック曲が風に乗って流れていきます。
改行
改行
ここがアイオア州ならトウモロコシ畑に野球場を作ろうかってトコですけどね。←厨二病が抜けきらんねぇ……(-_-;)
改行