精神医療」カテゴリーアーカイブ

本のご紹介

刊行によせて

「気がつけばみんな同じだったりする」~統合失調症の母とオイラの日常~ 瀬良垣りんじろう著 日本評論社刊 

著者の瀬良垣さんはお父様のことを知らずに育ちました。そして、お母様は統合失調症で彼が幼少期には入院していたため、一緒に暮らし始めたのは小学5年生になってから。

私の母と同じく陽性症状がでた時の行動が激しいので、日常はお祭り騒ぎのようだったのではないかしらと、自分の過去も重ねながらページをめくりました。辛い状況もユーモアを交えて明るく語ってくださっているので重くならずに読める内容だと思います。

同じ「子ども」の立場ということで、「刊行によせて」を書かせて頂きました。本日発売是非、手に取っていただけると嬉しいです

cl「瀬良垣さんと私」

 

 

「悲しいけど、青空の日」親がこころの病気になった子どもたちへ

田野中

田野中先生の発起したクラウドファンディングで出版が実現したドイツの児童専門書。

「悲しいけど、青空の日~親がこころの病気になった子どもたちへ」の翻訳本が完成して、手元に届きました嬉しい

「絵本」だけど133ページまであって、けっこうなボリューム感です

でも、開いてみると1ページの文字数が多すぎないので、子どもでも読みやすいだろうと思います

青空3

主人公のモナちゃんが表情豊かに描かれていて、「怒ってるな~」とか「泣きそうに不安なんだ~」とか、絵からダイレクトに伝わってきました。とくに63ページの抜け殻のようなイラストが悲壮感がでていて「いい表情(画)だなぁ」と。(本を手にした方は、是非見てみてください

母親の状況がよくわからず不安だらけの1章では、冴えない表情が多いモナちゃんですが、知識や手を貸してくれる人、同じ立場の仲間との繋がりを得て、読者である子どもにその情報をシェアする2章ではすっかり表情が明るくなっているのにホッコリできました

1章のストーリーでは、学校から帰ったらカギが閉まっていて、ベルを鳴らしてもなかなか扉が開かず、長い時間外で待ちぼうけをくらったり。

ようやく家に入れてもらえたら、中は散らかりっぱなしで、片付けと食事を作らなければならなかったり。

そうそう、私も同じだったよなぁなんて、共感しながら読み進めた次第です。

学校生活では友だちにモナが家庭の状況を隠す(言えない)せいで、遊ぶ約束がうまくできず、そのうち誘ってもらえなくなったことや、

「モナもママと同じように変なんだよ!いっしょに遊んだら変なのがうつるよ!」と仲間外れに発展する様子など、キレイごとではない現実的なエピソードが描かれてあるのもとても良かったです。

ところで、モナは学校の担任の先生が気づいてくれて、先生の手助けのおかげで医療や支援先と繋がることになるのですが。

私自身は学校の先生はまったく頼りにできませんでした。というか、教師に家庭の問題を相談しようと思ったことが一度もなかったのです。 また、他の子どもの経験談では、教師に相談したら不適切な対応を受けて傷つくことになってしまった。という話もありました。一方で、先日紹介した「統合失調症のひろば」のかにゃんこさんの体験談では、学校の先生が問題解決までには至らないまでも話を聞いてくれていて、彼女にとっては助けになっていたことが書かれていました。

そんなこともあり、ちょっとだけ、「学校の先生が手を貸してくれない場合は?」と思ったりもしていたら…

モナが読者の子どもに自分の体験から得た精神医療と支援先の情報を解説してくれる2章の中で、こんな描写が

それは、役所の子育て支援の場所に来ていた、パパが精神疾患のアレックスとのやりとり…

アレックス

私(モナ)が学校の先生に「悲しい日」のことを話したと言ったら、アレックスはすごく勇気が出たって。

「でもね、」と彼は言った。「ぼくは、学校の先生に、パパの病気のことをぜったい話さないよ。だって、ぼく先生のことが好きじゃないんだ。だけど、レオンのママにはもしかして話すかも。レオンは、ぼくの友だちなんだ。」

みんながみんな、学校の先生に相談できないことが、このシーンでフォローされていたことに感動を覚えましたそして…、そういう時には、仲の良い友だちのお母さんとか、話せそうなオトナが周囲にいるかもしれないことへのヒントが示唆されていて、ページをめくると話せそうなオトナがいるか一緒に考えて書き込めるようになっていました

また、話せる人がまったくいない子どもには、

「私がだれにも話せないときは、どうしたらいいの?」というページで、公的な相談先の電話番号と、利用方法の解説がありました

青空④

まさに、このページの情報は、相談できる大人がいなかった10歳の自分に教えてあげたい内容でした。きっと私は、電話していたはずです

子どもの頃、こんな絵本に出会いたかった

この絵本は小学校や中学校の図書館において欲しいなと思いました。

本と一緒に届いた田野中先生からの手紙に、コロナ禍が終息して図書館が開館されたら、この本をリクエストして欲しいとのお願いが書かれていました。

私も近くの図書館にリクエストしようと思っています。みなさんも是非図書館でのリクエストをお願いします

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真夜中に沢庵

昨夜は急に酷い眠気に襲われた為、20時頃には就寝することになった

あまりに早く寝入ったせいで、真夜中1時過ぎに目が覚めてしまい…

フと思いついて、沢庵を作った

少し乾燥してしなっとなった大根を、いちょう切りして甘酢と一緒にジップロックに入れるだけで完成

真夜中、電気もつけず薄明かりの中、酢と塩と砂糖をかき混ぜている自分が妙に面白かった

沢庵、美味しくできるといいな

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(本のご紹介)

空とぶカメ

「空とぶかめ」三村雅司全詩集(京阪奈情報教育出版)

夏苅先生から届いたご本

「わぁ!綺麗な装丁!!」興奮しながら本を開くと…さおり織の中表紙が

私もさおり織が大好きなので、思わず持っているコースタ―と並べてカシャリ

さおりおり

この本は夏苅先生のご著書「人は、人を浴びて人になる」に出てくる「かめちゃん」の全詩集だ。

夏苅

(11番目の出会い『「自信を持つこと」を教えてくれた統合失調症のかめちゃん』に夏苅先生とかめちゃんの出会いが書かれている。)

本を読む際に、つい「あとがき」を最初に読んでしまうのだけれど。

「あとがき」に作家の寮美千子さんが文章を綴っていた。そこにはかめちゃんと彼女の出会いと、この本を出版するキッカケになったエピソードが書かれてあり、彼女はこの本の内容を「かめちゃんの心と体の旅の軌跡」「漂流の記録」と表現していた。

読んでみて納得。

「ぼくは本来ルンペンなんだ」と言うかめちゃんは、本当に根っからの旅人で、詩やエッセイからは様々な土地でみた風景やその土地での出来事、人との交流を大いに感じることができた。

心の赴くままに、思いつきと行き当たりばったりの旅路の中で、「保証人になってあげますよ」と見ず知らずの彼にアパートを紹介してくれる人との出会いがあったり、

乗り物に乗らずに放浪している彼を知らないおばさんが追いかけてきて「あなた、お坊さんなんでしょ」と言って「ちがいます」と答えているのに、「でも本当はお坊さんなんでしょ、私わかるんだから」と強引に食べ物をどっさりくれたり、

喫茶店で店のマスターにこたつやふとんの中古を扱っているところを尋ねたら、となりでコーヒーを飲んでいた女性が「うちにあるから、明日とりにおいでよ」と声をかけてくれて、翌日いくと朝ごはんを用意して食べさせてくれた上に、生活用品一式と荷物を運ぶ車と友人を手配してくれていた。というような、温かい人との出会いのエピソードの数々が、私にはとても魅力的に感じられた。

ちなみに、一番心に残った詩は、沖縄での暮らしを詠った「ゆいまある」と「愛楽園のおじさんとおばさんに」。ハンセン病のおじさんとおばさんとの交流がかかれているのだけれど、胸が痛くなって切なくて優しい気持ちになる詩だった。

かめちゃんはかめらしく。

私は私らしく、そう生きればよいのだと、そんなことを考えながら、優しい読後感が残る1冊でした

 

 

 

在宅の友

 自宅で過ごす時間が増えて、本がすっかり在宅の友となっている。
「統合失調症のひろば」最新号を読み終えた。

ひろばと精神

今号ではなんと、私と同じく精神障害者の親をもつ「子ども」の立場の方の原稿が、私を含めて4人も掲載されていた。(以下タイトル)

 

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●「助けて…」のその後で  かにゃんこ(学生)
●あなたは誰ですか、何ですか(A面) かわかみしんたろう(精神科医)
●母が統合失調症であることのカミングアウト 瀬良垣りんじろう (55歳のおっさん)
●「夫の身内へのカミングアウト」 中村ユキ
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「子ども」の立場の原稿がこんなに一度に掲載されたのは、創刊以来初めてかもしれない。
 発症した親の言動や周囲の様子など、自分と重なる場面や、もっと大変な様子などが書かれていて、「あぁ、そうそう。うちも、そういうことあったな~」なんて、思い出しながら読んだ。

 

 中学生の時に大いにハマったマンガ。「ぼくの地球を守って」(白泉社・日渡早紀著)の中では、地球とは違う星での前世の記憶を持つキャラクターたちが集まり、その中のひとりの記憶(エピソード)をもとに、それぞれが欠けていた記憶を思い出し発展させていくことを「同調連鎖」と言っていたけれど…。
 私も他の子供の体験から、「同調連鎖」が起こる。
 「そういえば…」と忘れていた記憶を掘り起こす作業は、けっこう新鮮な驚きがあったりして嬉しい。それが悲しい記憶だとしても、やはり私は思い出したい。
 家族の立場では「親」「きょうだい」がこれまで体験を語ることが多かったので、「子ども」や「配偶者」など、色々な視点の体験談が今後も増えていくと良いなと思う。

 

 当事者、家族、精神医療従事者だけではなく、毎回バリエーション豊かな執筆者の記事が掲載されるこの雑誌だが、今号では酒造りを生業とする杜氏の原稿「自分を殺す」や、沖縄のユタを訪ねる内容の里中さんの原稿、不倫相手がだんだんと精神的に病んでストーカー化していく状況を描いた探偵社の重川さんの原稿などが掲載されている。

 

そして、

 

「主体性の回復をめざす」映画「精神」「精神0」からみた山本昌知医師 と題して、想田和弘監督の原稿も掲載されている。

 

 想田監督といえば、今年5月から新作映画「精神0」の、日本での劇場公開が始まる予定だったが、新型コロナの影響でやむなく新しい形(仮設の映画館・オンライン配信)での公開に踏み切るらしい。

 

詳細と監督のメッセージはコチラ→仮設の映画館
インタビュー記事はコチラ→想田監督インタビュー

 

 じつは、2月にブログでご紹介していた、コロナのせいで中止になったイベント演劇「精神病院つばき荘」について語り合うトークショーに出演される予定だったのが、「精神0」で描かれている主人公で、演劇「精神科病院つばき荘」を観る会の代表でもある山本昌知先生だ。

 

 本当は5月、「つばき荘」と「精神0」を合わせて一緒に盛り上げたい気持ちでいたけれど、残念ながら「つばき荘」も延期なので、まずは「精神0」をオンラインで観るのを楽しみにしている。

 

「精神病院つばき荘」はコロナ終息の見通しがついたら、実現すべく動き出すそうなので、その際にはまたご報告したいと思っている。

 

 今号の特集は「カミングアウト」と「急がない治療」だったが、「急がない治療」関連で、オススメなのがこの1冊!
急性期治療を再考する
「急性期治療を再考する」

 

 久しぶりに読み返してみたが、沖縄のオリブ山病院のナースの「急性期の関わり」についての座談会と、都立松沢病院の精神科医と看護師たちによる、病棟でのダメダメ(禁止)を、ダメモトからOKに改革していく過程の座談会が何度読んでも興味深い。

 

 あと、この本には「電気けいれん療法」に関しての原稿も4本掲載されている。

 

●電気けいれん療法について思うことーつむがれる「時」を求めて(松本葉子)
●私の看護師・患者の経験から拘束・隔離・電気ショック療法を考える(大津木直子)
 ●論文「電気けいれん療法をめぐる噛み合わない議論」吉村夕里
●論文「精神医療論争~電気ショックをめぐる攻防~」吉村夕里

 

 じつは、ここのところクロザピン治療と電気けいれん療法について、聞かれることが続いたので、私も改めてクロザピン治療と電気けいれん療法について気になって読み直してみた次第。

 

 クロザピン治療に関しては、「統合失調症のひろば」に掲載されたものが以下の記事だ。

 

NO.5(2015年春号)
「クロザピンは適切に使われているか」大下隆司(精神科医)
NO.8(2016年秋号)
「クロザピンと電気けいれん療法と世に棲む患者」野田哲朗(精神科医)
 ひろばひろば

 

  関心のある方は、是非読んでみて欲しい。