自宅で過ごす時間が増えて、本がすっかり在宅の友となっている。
「統合失調症のひろば」最新号を読み終えた。
今号ではなんと、私と同じく精神障害者の親をもつ「子ども」の立場の方の原稿が、私を含めて4人も掲載されていた。(以下タイトル)
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●「助けて…」のその後で かにゃんこ(学生)
●あなたは誰ですか、何ですか(A面) かわかみしんたろう(精神科医)
●母が統合失調症であることのカミングアウト 瀬良垣りんじろう (55歳のおっさん)
●「夫の身内へのカミングアウト」 中村ユキ
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「子ども」の立場の原稿がこんなに一度に掲載されたのは、創刊以来初めてかもしれない。
発症した親の言動や周囲の様子など、自分と重なる場面や、もっと大変な様子などが書かれていて、「あぁ、そうそう。うちも、そういうことあったな~」なんて、思い出しながら読んだ。
中学生の時に大いにハマったマンガ。「ぼくの地球を守って」(白泉社・日渡早紀著)の中では、地球とは違う星での前世の記憶を持つキャラクターたちが集まり、その中のひとりの記憶(エピソード)をもとに、それぞれが欠けていた記憶を思い出し発展させていくことを「同調連鎖」と言っていたけれど…。
私も他の子供の体験から、「同調連鎖」が起こる。
「そういえば…」と忘れていた記憶を掘り起こす作業は、けっこう新鮮な驚きがあったりして嬉しい。それが悲しい記憶だとしても、やはり私は思い出したい。
家族の立場では「親」「きょうだい」がこれまで体験を語ることが多かったので、「子ども」や「配偶者」など、色々な視点の体験談が今後も増えていくと良いなと思う。
当事者、家族、精神医療従事者だけではなく、毎回バリエーション豊かな執筆者の記事が掲載されるこの雑誌だが、今号では酒造りを生業とする杜氏の原稿「自分を殺す」や、沖縄のユタを訪ねる内容の里中さんの原稿、不倫相手がだんだんと精神的に病んでストーカー化していく状況を描いた探偵社の重川さんの原稿などが掲載されている。
そして、
「主体性の回復をめざす」映画「精神」「精神0」からみた山本昌知医師 と題して、想田和弘監督の原稿も掲載されている。
想田監督といえば、今年5月から
新作映画「精神0」の、日本での劇場公開が始まる予定だったが、新型コロナの影響でやむなく新しい形(仮設の映画館・オンライン配信)での公開に踏み切るらしい。
本当は5月、「つばき荘」と「精神0」を合わせて一緒に盛り上げたい気持ちでいたけれど、残念ながら「つばき荘」も延期なので、まずは「精神0」をオンラインで観るのを楽しみにしている。
「精神病院つばき荘」はコロナ終息の見通しがついたら、実現すべく動き出すそうなので、その際にはまたご報告したいと思っている。
今号の特集は「カミングアウト」と「急がない治療」だったが、「急がない治療」関連で、オススメなのがこの1冊!
「急性期治療を再考する」
久しぶりに読み返してみたが、沖縄のオリブ山病院のナースの「急性期の関わり」についての座談会と、都立松沢病院の精神科医と看護師たちによる、病棟でのダメダメ(禁止)を、ダメモトからOKに改革していく過程の座談会が何度読んでも興味深い。
あと、この本には「電気けいれん療法」に関しての原稿も4本掲載されている。
●電気けいれん療法について思うことーつむがれる「時」を求めて(松本葉子)
●私の看護師・患者の経験から拘束・隔離・電気ショック療法を考える(大津木直子)
●論文「電気けいれん療法をめぐる噛み合わない議論」吉村夕里
●論文「精神医療論争~電気ショックをめぐる攻防~」吉村夕里
じつは、ここのところクロザピン治療と電気けいれん療法について、聞かれることが続いたので、私も改めてクロザピン治療と電気けいれん療法について気になって読み直してみた次第。
クロザピン治療に関しては、「統合失調症のひろば」に掲載されたものが以下の記事だ。
NO.5(2015年春号)
「クロザピンは適切に使われているか」大下隆司(精神科医)
NO.8(2016年秋号)
「クロザピンと電気けいれん療法と世に棲む患者」野田哲朗(精神科医)
関心のある方は、是非読んでみて欲しい。